京都は国内外、多くの観光客を引き寄せる魅力ある古都。春夏秋冬、どの季節でも楽しむことができるのが京都という古都です。コロナ禍で落ち込みはあったものの、観光客数は着実に戻ってきており、京都市産業観光局の調べによると2022年の宿泊数は969万人で2021年の516万8千人に対して、87.5%増。今年2023年はそれを上回る勢いです。その京都で京都らしい佇まいの宿、そしてこの、おばんざいを味わうことができる宿「二条宿」。京都生まれ、京都育ち、生粋の京都人の宮杉江美さんが女将をつとめておられます。
宮杉江美さんは生粋の京都人
京都は歴史的な仏教寺院や庭園などに加え、皇室の御所、神社、伝統的な木造家屋など、日本の歴史と文化を感じることができる古都であり、観光地です。国内外から京都へとやってくる多くの人たちを魅了するのは景色や街が醸し出している雰囲気だけではありません。京都ならではの食であるおばんざいも観光客が楽しむ京都の魅力となっています。
この京都で二条宿を営む宮杉江美さんは、1962年3月7日生まれ。これまでに一度も京都を離れたことがない、生粋の京都人です。
右京区出身の宮杉江美さん
宮杉江美さんが生まれ育ったのは豊かな自然にめぐまれている京都市右京区。右京区の北部はほとんどが森林となっています。
県外の方に右京区はどんなところと聞かれると、嵯峨・嵐山があるところ、というとわかっていただけます。右京区では緑と山々、それに桂川の流れが京都らしい風景を楽しむことができます。秋の紅葉のシーズンになると県外から多くの人が観光にいらっしゃいます(宮杉江美さん)。
宮杉江美さんが観光業という世界に入った理由
宮杉江美さんは、地元の高校を卒業後、18歳で市内の旅館で働き始めます。
お客様が笑顔で楽しんでいる姿を見て、何か観光に関わる仕事がしたいと考えました。申請がたまたま観光関連の仕事をしておりましたので、相談したところ、紹介してもらいました。今だから言えることですが、実は旅館よりは飲食の道に進もうと考えていました(宮杉江美さん)
宮杉江美さんが料理の道へ進もうと思ったのは京都の伝統的な、そして京都の人が誰でも普通に食べている料理「おばんざい」をより多くの人に楽しんでもらいたいと思っていたからなのだそうです。
おばんざいは京都の土地の野菜などを使う料理で京都人にとって珍しい料理ではないんです。うちの母や祖母も普通に作っていましたから。それにウチでも少し京都野菜を作っていましたから。ある時、東京から来た親戚におばんざいことが京都らしさを楽しんでもらえるものかもしれない、と言われたから。美味しいものを食べている顔、作る方も嬉しくなりますし、それが京都の料理だったらなあって思ったのです(宮杉江美さん)。
しかし、宮杉江美さんは高校卒業後、旅館で働き始めることになります。
宮杉江美さんは38歳で独立し、夢を実現
高校卒業後、宮杉江美さんは20年間、その旅館に勤務しました。しかし、キリのよい20年目を迎えた、2000年に独立します。
後継者がいないため、廃業も視野に入れていた方から、もし良かったら継いでもらえないかというお話をいただきました。それが今の二条宿です。この規模の旅館だったら、なんとか切り盛りできるだろう、そう思いました(宮杉江美さん)。
宮杉江美さんの旅館は世界遺産である二条城からさほど遠くないところにあります。京都旅行の拠点として非常に好立地だといえる場所ではないでしょうか。この旅館には居酒屋が併設されていたのですが、旅館のリニューアルに合わせて、ここもおばんざいを出すお店として、リニューアルしました。その際には女将の宮杉江美さんを昔からよく知っている、気心が知れた方、3人が仲居さんとして働いてくれることに。
おばんざいと宿
旅館と飲食店、両方の経営はスタートから大変なことになるとわかっていましたが、そこは勢いで進めました。3人の仲間がメンバーで入ってくれましたし。立ち上げにはスタッフ全員が本当に苦労しましたが、やって良かったと思います。今は料理だけでも楽しみたい、そういうお客様にも、おばんざいを楽しんでいただけるようになっています(宮杉江美さん)。
旬の京野菜を楽しめる宮杉江美さんのおばんざい
生まれも育ちも京都で、ご両親も京都出身という宮杉江美さんにとっておばんざいは特別なものではないと言います。宮杉江美さんだけでなく、京都の人にとって、おばんざいは特別なものではなく、ごく普通の当たり前の家庭料理。その味やレシピは祖母から母へ、母から娘へ、また姑から嫁へと、京都の家庭で受け継がれているものだと言います。
慣れ親しんだ家庭の味で
わたくしが子供のころから食べてきた、慣れ親しんだ味なんです。京都の家庭に受け継がれてきた食文化だといえるんですね。とってもシンプルな味付けなんですが、毎日食べても飽きることがないのがおばんざいです(宮杉江美さん)。
おばんざいは京みず菜、京壬生菜、九条ねぎ、万願寺とうがらし、えびいも、聖護院かぶ、聖護院だいこん、くわい、賀茂なすなど、旬の京野菜など季節の食材を使い、食材で無駄がでないように工夫した京都の家庭料理です。
何も特別な料理ではありません。今日はおばんざいを食べよう、とかしこまるようなものでもありません。確かに食材は京都ならではのものですが。ずっと慣れ親しんできた京都の家庭の味です。それをみなさまにも楽しんでいただきたいと思います。お食事からも京都を感じてもらえたら、そう思います(宮杉江美さん)。
宮杉江美さんの経営理念についてしらべました
宮杉江美さんは自身の思いを語っておられます。
京都で素晴らしい体験をしてもらいたいと思っています。歴史、文化を知ってもらいたいと思います。私たちは、常に誠心誠意本物のおもてなしを追求しています。旅行先での体験は、観光名所を巡るだけではありません。お宿に帰って旅の疲れをいやしていただくことも、立派な観光の一部です。お客さまの素晴らしい京都での体験を彩る一部になれたら幸いです(宮杉江美さん)。
宮杉江美さんが掲げている経営理念は「つつましやかに謙虚に 古都の誇りを忘れずに」。「二条宿」で働くスタッフにもこの気持ちをいつまでも持ち続けてほしいと思っているそです。
まとめ
宮杉江美さんは二条宿が提供する食事と宿のサービスを通じて、京都の歴史・伝統と文化を伝えておられます。今、京都には国内外から多くの観光客が訪れています。コロナ禍で旅行制限がありましたが、それも終わったことで、この観光客の急増はしばらく続くのではないでしょうか。「また京都に来たい、何度でも来たい、そう思ってもらえるよう、最上のサービスを提供していきたいと思います」、宮杉江美さんは決意を語ります。